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2013/10/12

笑って泣ける『落語』のすすめ

人情話



家元 立川談志


 皆さん突然ですが落語はお好きですか?
 私はかなり好きです。
 今回のエントリーは若い方にはあまり馴染みの少ないだろう落語について書きますよ。

 落語といえば面白おかしい話を落語家さんが壇上でお話を聞かせてくれるそんなイメージでしょうか?
 実は落語には笑える話ばかりでは無いんです。

 落語は大きく分類すると3つのカテゴリーに分けることができます。
 一番イメージしやすい基本となる面白話が『落とし噺』
 幽霊やお化けなどを落語に取り入れた『怪談話』
 そして私の大好きな『人情話』

 人情話とは親子の愛や夫婦愛あるいは町民の恋愛話を落語に取り入れたものです。

 人情噺の代表例を一部紹介します。

「牡丹燈籠」
「塩原多助一代記」
「真景累ヶ淵」
「ちきり伊勢屋」
「お富与三郎」
「文七元結」
「三井の大黒」
「唐茄子屋政談」
「鼠穴」
「火事息子」
「鰍沢」


 数ある人情話の中でも私の好きな演目は
 「芝浜」と「紺屋高尾」です。

 落語ファンからは「おいおい、よりによってその2つかよ。ニワカなの丸わかりだぞ」といった野次が聞こえてきますが構わず進めます。
 このエントリーは落語初心者のために書いておりますのであしからず。




芝浜


「芝浜」といえば落語界の異端児、天才立川談志の十八番でした。
この人の芝浜を聞いて落語好きになったのは言うまでもありません。
 うだつのあがらない酒好きの亭主とその妻の夫婦愛を描いたストーリーです。劇中の季節も相まって年末に上演されることが多いお話ですね。



あらすじ(wikipediaより転載)

天秤棒一本で行商をしている、魚屋の勝(演者によって主人公の名には違いあり)は、腕はいいものの酒好きで、仕事でも飲みすぎて失敗が続き、さっぱりうだつが上がらない、裏長屋の貧乏暮らし。その日も女房に朝早く叩き起こされ、嫌々ながら芝の魚市場に仕入れに向かう。しかし時間が早過ぎたため市場はまだ開いていない。誰も居ない、美しい芝浜の浜辺で顔を洗って煙管を吹かしていると、足元の海中に財布を見つける。拾って開けると中には目を剥く大金(桂三木助の演出では、現在の価値換算で800万円程度)。有頂天になって自宅に飛んで帰り、飲み仲間を集めて大酒を呑む。
翌日、二日酔いで起き出した勝に女房、こんなに呑んで支払いをどうする気かとおかんむり。勝は拾った財布の金のことを訴えるが、女房は、そんなものは知らない、お前さんが金欲しさのあまり夢に見たんだろと言う。焦った勝は家中を引っ繰り返して財布を探すが、どこにも無い。彼は愕然として、ついに財布の件を夢と諦める。つくづく身の上を考えなおした勝は一念発起、断酒して死にもの狂いに働きはじめる。
懸命に働いた末、三年後には何人かの人も使ういっぱしの店を構えることが出来、生活も安定し、身代も増えた。その年の大晦日の晩のことである。勝は妻に対して献身をねぎらい、頭を下げる。ここで、女房は勝に例の財布を見せ、告白をはじめる。あの日、勝から拾った大金を見せられた妻は困惑した。十両盗めば首が飛ぶといわれた当時、横領が露見すれば死刑だ。長屋の大家と相談した結果、大家は財布を拾得物として役所に届け、妻は勝の泥酔に乗じて「財布なぞ最初から拾ってない」と言いくるめる事にした。時が経っても落とし主が現れなかったため、役所から拾い主の勝に財布の金が下げ渡されたのであった。
事実を知った勝はしかし、妻を責めることはなく、道を踏外しそうになった自分を助け、真人間へと立直らせてくれた妻の機転に強く感謝する。妻は懸命に頑張ってきた夫の労をねぎらい、久し振りに酒でも、と勧める。はじめは拒んだ勝だったが、やがておずおずと杯を手にする。「うん、そうだな、じゃあ、呑むとするか」といったんは杯を口元に運ぶが、ふいに杯を置く。「よそう。また夢になるといけねえ」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%9D%E6%B5%9C






紺屋高尾


 その優れたストーリー性と普遍性が評価され落語にとどまらずなんと4度も映画化されています。
 主な演者としては4代目柳亭左楽、6代目三遊亭圓生そして立川談志も名を連ねます。

 紺屋で修行中の純朴な青年とその名も轟く花魁との恋愛話です。
 現代でイメージするとしたら工場勤務の青年とトップアイドルとの恋愛といったところでしょうか。
(遊郭を現代のソープランド等と同一視しないでください。花魁まで上り詰めた女性はそれこそ庶民はおろか大名クラスまで袖にできる権力を持っていました)



あらすじ(wikipediaより転載)

神田にある紺屋に勤めている染物職人、久蔵。11の年から親方に奉公して、26となった今でも遊び一つ知らず、まじめ一途に働く好青年だ。その久蔵が、なぜか三日前から患って寝込んでしまっている。心配になった親方の六兵衛が尋ねてみると、返ってきた答えはなんと「お医者様でも、草津の湯でも…」。

「恋わずらいか!?」
親方仰天。詳しく話を聞いてみると、三日ほど前に友達づきあいで吉原に行き、話の種だからと「花魁道中」を初めて目にしたという。その時目にした高尾太夫のこの世のものとも思えない美しさに魂を奪われ、それから何を見ても高尾に見えるようになってしまった。あんな美人と一晩語り明かしてみたいが、相手は「大名道具」と言われる松の位の太夫、とても無理だ…と、帰ってきたとたんにがっくり来て、寝込んでしまったのだというのだ。
唖然とした親方だったが「このまじめ一徹の男に、面と向かって『駄目だ』というとかえって変になってしまう。ここはひとつ、久蔵の願いをかなえてやろう」と思い直して、「いくら太夫でも売り物買い物だろ? 俺に任せておけば会わせてやる」。
さすがに最高位の花魁だけあって、高尾を座敷に呼ぶのにはどう少なく見積もっても十両はかかる。久蔵の給金の三年分だ。しかし、それを聞くと希望が出たのか、久蔵はにわかに元気になった。
それから三年というもの、久蔵は一心不乱に働いて、入ってくるお金はすべて貯金に回した。その結果、三年たったころには彼の貯金は十両を通り越し、十三両近くにもなっていた。このお金を持って、遊びに行ければいいのだが、何せ相手は最高位。突然乗り込んでいっても会えるわけがない。そこで、親方の発案でお玉が池の竹内蘭石という医者を案内役に仕立てることにした。この先生、腕の方はアヤフヤだが、遊び込んでいてなかなか粋な人物。早速呼んで教えを請うと、予想通りいろいろとアドバイスをしてくれる。
「いくらお金を積んでも、紺屋職人では高尾が相手にしてくれません。そこで、久蔵さんを流山のお大尽(金持ち)に仕立てて、私がその取り巻きということで一芝居打ちましょう。下手なことを口走ると紺屋がバレるから、何を言われても『あいよ、あいよ』で通してください」。
帯や羽織もみな親方にそろえてもらい、すっかりにわか大尽ができあがった。先生のおかげで無事に吉原に到着し、高尾に会いたいと申し出るとなんと高尾が空いていた!しかも、高尾自身も「大名のお相手ばかりで疲れるから、たまにはそんな方のお相手がしてみたい」と言っているんだとか…。
さて、三浦屋。久蔵が高尾の部屋でドギマギしていると高尾太夫がしずしずと登場。少し斜めに構えて、煙管で煙草を一服つけると「お大尽、一服のみなんし」。松の位の決まりとして、初会では客に肌身は許さないから今日はこれで終わり。花魁が型通り「今度はいつ来てくんなます」と訊ねると、感極まった久蔵は泣き出してしまった。
「ここに来るのに三年、必死になってお金を貯めました。今度といったらまた三年後。その間に、あなたが身請けでもされたら二度と会うことができません。ですから、これが今生の別れです…」。
大泣きした挙句、自分の素性や経緯を洗いざらいしゃべってしまった。流石は最高位の花魁。高尾の方も、久蔵の指先を見てそのうそに気がついていたらしい。怒られるかと思いきや、高尾はなぜか涙ぐんだ。
「源・平・藤・橘の四姓の人と、お金で枕を交わす卑しい身を、三年も思い詰めてくれるとは、なんと情けのある人…」。
自分は来年の三月十五日に年季が明けるから、その時女房にしてくんなますかと言われ、久蔵、感激のあまり泣きだした。
お金をそっくり返され、夢うつのまま神田に帰ってきた久蔵は、それから前にも増して物凄いペースで働き出した。
「来年の三月十五日…あの高尾がお嫁さんにやってくる」、それだけを信じて。
「花魁の言葉なんか信じるな」なんていう仲間の苦言も何のその、執念で働き通していよいよ「来年の三月十五日」…。
本当に高尾がやってきた。久蔵、「ウーン…」と失神。その後、久蔵と高尾が親方の夫婦養子になって跡を継ぎ、夫婦そろって何とか店を繁盛させたいと、手拭いの早染め(駄染め)というのを考案する。その速さと粋な色合いがブームとなり、通称「かめのぞき」と呼ばれるようになった久蔵の店は大繁盛することになった。
「紺屋高尾」の由来話。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%BA%E5%B1%8B%E9%AB%98%E5%B0%BE





 笑って泣いて最期にジーンとさせる人情話。そして落語家さんの語り口の妙味。日々の鍛錬の賜物ですが何度聞いてもまた泣かされるその話術に脱帽です。

 これをきっかけにぜひ落語を聞いてみてください。本当におもしろいですよ。




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