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2013/10/21

不思議な日本語 数え方の謎

数え方の謎



 今回は物の数え方です。

 私は釣りが趣味ですがその中で使われる釣り用語に『ツ抜け』という言葉が有ります。



 釣り人A「俺は3匹しか釣れなかったけど、あんたはどれだけ釣れたんだい?」
 
 釣り人B「おう。俺はツ抜けだな」
 
 釣り人A「ほぅ、そりゃ凄い」



 釣り人同士においてはこんな会話が成立します。

 この『ツ抜け』とは10匹もしくはそれ以上のことを表しています。



 ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ、むっつ、ななつ、やっつ、ここのつ、とお


 古来からある物の数え方ですがよく見てみると1~9までは『つ』が後ろに付きますが10以上になると『つ』が付きません。
 前述の釣り用語の『ツ抜け』はこの法則を利用しています。
 つが抜けた、つまり、つが付かない数=10 をあえて『ツ抜け』と言い換えているのですね。
 初めてこの言葉を聞いた時説明を聞かなければそれが10を表しているとは気づけませんでした。
 今は釣り人の間でもあまり使われなくなってしまいましたが、なかなか粋な表現ですよね。





ウサギの数え方







 ウサギは一羽二羽と数えます。もちろん一匹二匹でも間違いではありませんがやはり一羽二羽と数えたほうが美しい日本語と言えるのでは無いでしょうか。
 『羽』というのは普通空を飛ぶ生き物、鳥や蝶を数える際に使う助数詞ですが空も飛ばない哺乳類であるウサギがなぜ羽で数えるのか?不思議ですよね。


 諸説ある中で私が一番好きな説を紹介します。


 日本が誇る生物学者 南方熊楠の『十二支考』に詳しくあります。


南方熊楠


十二支考(2)兎に関する民俗と伝説
従来兎を鳥類と  見做みな し、獣肉を忌む神にも供えまた家内で食うも忌まず、一疋二疋と数えず一羽二羽と呼んだ由


 古来この国は、仏教により四足の獣を食することを禁じられていました。
 二足である鳥は禁じられていなかったのでウサギを羽と数え、やや強引ではあるものの二足の仲間に入れてしまうことでその禁を破らずに済むという、トンチに似た知恵を働かせたということですね。




先端が耳かきになっている


 江戸時代に贅沢物であるかんざしがお上によって禁止された時代、町民たちはかんざしの先端を耳かきにしてこれは日用品であると強弁した逸話が有りますが、うさぎの話と同様我々のご先祖様は知恵を絞って規制をくぐり抜けていたのですね。
その魂は今もなお脈々と続いているに違いありません。





匹と頭


 これもなかなか使い分けが厄介ですよね。
 実は明確な決まりはありません。
 小型の生物には匹。大型の生物には頭を使うのが一般的ですが問題になるのは中間の大きさです。
 チワワは匹でしっくりきますがセントバーナードあたりになると頭を使いたくなります。
 豚は匹だけど猪は頭。
 ヤギは匹?頭?

 やはり中間の大きさの動物の扱いが難しいですよね。
 そこで皆さんに一つ提案があります。
 これは私が普段目安として使っているものです。それを紹介します。


抱きかかえることのできる動物は匹。それ以上の動物は頭。


 どうでしょうか?
 大体この感覚で匹と頭を使い分けるとしっくり来ると思います。
 これは公的な機関が決めたことでもなんでもないのであくまで参考になれば……ということです。





タンスは一棹二棹



 タンスの助数詞は 『棹』さお です。
 数ある家具の中でも異質ですよね。もちろんこれにも由来が有ります。

 タンスが普及する以前は車長持が一般的でした。


車長持(下部に車輪が付いている)

 車長持とは大型の長持の下に車輪を取り付けることで移動を楽にしたものです。

 なぜ大きくて重い長持ちに車まで付けて移動を容易くしたかと言いますと江戸の町には火事が付き物だったからです。

 火事と喧嘩は江戸の花と歌われるほど江戸は火事の頻発した都市でした。
 1601年~1867年(大政奉還)までの267年間に49回の大火が発生しています。
(ちなみに同じ期間で大阪では6回京都では9回です)

 あくまで大火の数で小さな火事まで含めると約1800回起きています。
 これは記録に残っている分なのでこれ以外にも無数に火事があったことは想像できます。

 これだけ頻繁に起こる火事から家財を持って逃げるとなると車付きの長持が重宝されたのは必然だったと思います。


明暦の大火


 ただしこの車長持が問題を引き起こします。

 明暦三年(1657年)の江戸大火において無数の町民が車長持を持って避難したため各地で渋滞が起き多くの犠牲者が発生しました。そのため車長持の製造販売が禁止されることになり今ある普通の長持に置き換わって行きました。

 ただ禁止されたとしてもやはり火事は起こるもので重たい長持を持ち運ぶ必要性は失われたわけではありません。

 そのためこの頃の長持は担いで運べるように棹が通せるように変化します。

 タンスとは大型化した長持のことなので同様に棹が刺さる構造になっていました。

 この名残が現在まで『棹』という助数詞として残っています。


 火事さえ無ければタンスを棹と数える文化は無かったかもしれないと考えると本当に日本語はおもしろいですね。




 皆さんもおもしろい物の数え方見つけてみてください。
 




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